作業手順と労働安全衛生法など
■安全衛生教育
●雇い入れ時の安全衛生教育
安衛法では
事業者は新たに作業者を雇い入れたとき、新規に入場したとき、又は作業者の作業内容を変更したときは、安全衛生に関し、下記各号の事項について教育を行わなければならない。
・機械、原材料等の危険性または有害性及びこれらの取り扱い方法
・安全装置、保護具の性能及び取り扱い方法
・作業手順に関すること
・作業開始時の点検に関すること
・整理、整頓及び清潔の保持に関すること
・事故時における応急措置及び退避に関すること
・上記各号のほか、従事する業務に必要な安全または衛生に関すること
ただし、職業訓練を受けた者等で十分な知識および技能を有していると認められる者に対しては教育 項目の全部または一部を省略することができる。(安衛法59条、安衛則35条)
●特別教育を必要とする業務事業者は危険または有害な業務に作業者をつかせるときは、安全衛生のため特別教育を行わなければならない。特別教育の業種 (省略)
●職長等の安全衛生教育建設業等政令で定める特殊の業種にあっては、新任の職長、作業長及び班長等で作業者を直接指導、監督する者(作業主任者を除く)に対し次の事項について教育を行わなければならない。
・作業方法の決定及び作業者の配置に関すること
・作業者に対する指導又は監督の方法に開すること
・危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
・異常時等における措置に関すること
・その他現場監督者として労働災害防止活動に関すること
職長等教育科目表
作業方法の決定及び作業者の配置に関すること1)作業手順の定め方
2)作業者の適正な配置の方法(2時間)
作業者に対する指導又は監督の方法に関すること
1)指導及び教育の方法
2)作業中における監督および指示の方法(2.5時間)危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること1)危険性又は有害性の調査方法2)危険性又は有害性等の調査に基づき講ずる措置3)設備,作業等の具体的な改善の方法(4時間)
異常時等における措置に関すること1)異常時における措置2)災害発生時における措置(1.5時間)
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること1)作業に係る設備及び作業所の保守管理の方法2)労働災害防止についての関心の保持,及び作業者の創意工夫を引き出す方法(2時間)
(注)ただし,上記教育科目の全部または一部について十分な知識,技能を有していると認められる者については,その教育を省略することができる
■労働安全衛生法では下記条文のように安全衛生教育を義務付けている。したがって作業手順書を作成しておく必要がある。
(安全衛生教育)
第五十九条
事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
第六十条
事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。一 作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。二 労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。三 前二号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの。
労働安全衛生規則 第四章 安全衛生教育(第三十五条-第四十条の三)
(雇入れ時等の教育)
第三十五条
事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。ただし、令第二条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓(とん)及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
2 事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。
■仕様書では
公共建築改修工事標準仕様書 (建築工事編)平成(平成19年版)建築工事安全施工技術指針第2章 仮設工事(共通事項)第6 仮設物の計画に当たっては,関連する別工事(以下「関連工事」という。)及び関連する施設との連係を総合的に考慮し、作業方法、作業手順等を検討すること。
第4章 外構工事
(計画)
第26 外構工事の計画に当たっては、敷地条件、関連工事間の連係及び敷地周辺への影響を考慮して、使用する機械及び作業手順を決定すること。
第29 改修工事の施工に当たっては、解体工事を含めた関連工事との連係を考慮し、それぞれの作業手順に従って作業を行うとともに、周辺環境及び第三者に対する安全措置を講ずること。
2 振動、騒音、粉じん、有機溶剤等による周辺環境の悪化を防止する措置を講ずること。
3 夜間作業を行う場分は、休憩所の確保等、安全衛生管理を行うこと。
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■作業手順書の作成
(出典:建設業災害防止協会 リスクアセスメント導入のポイント)
1)作業手順書作成の方法
作業手順書は、次の4段階法で作成するのが一般的である。
〔第1段階〕 | まとまり作業を単位作業に分解し、分解した単位作業の中から作業手順書を作成する作業を決める。 |
〔第2段階〕 | 決定した単位作業を作業の区切りごとに分解し、主なステップを決める。 |
〔第3段階〕 | 主なステップを最も良い順序に並べ替え、主なステップに急所を付け、作業区分を付ける。 |
〔第4段階〕 | 作成した作業手順書の主なステップごとに危険性又は有害性を予測し、評価して対策を立てる。 |
2)作業手順書作成時の留意点
1)現場の実状に合ったものであること。
2)労働安全衛生法等の法令に違反していないこと。
3)できるだけわかりやすく、具体的で、簡潔に表現する。
ⅰ)アステップ及び急所の文字の数は、15字以内にまとめる。
ⅱ)ステップの急所は、3項目以内とする。
ⅲ)表現の方法は、「何々する」といった肯定語を使用する。「何々しない」、「何々ではないか」のような否定語や疑問語は使わない。
3)作業手順書とリスクアセスメントの方法
1)危険性又は有害性の特定
危険性又は有害性の特定は、作成した作業手順書の主なステップにどのような危険性・有害性が潜んでいるか、過去の災害事例やヒヤリハット事例等を参考に検討する。
2)リスクの見積り及び評価
リスクの見積りは、もし「災害が発生した」とすると、その災害の「発生の可能性」はどの程度か、その災害の受傷の「重大性(重篤度)」はどの程度なのかをステップごとに見積もる。なお、作業手順書に基づいた過去のデータ等がない場合は、「発生の可能性」と「重大性(重篤度)」の見積りは、職長や安全衛生責任者並びに作業手順書作成時に参画した作業者等の過去の経験等を参考にする。
見積り及び評価は、社内で評価基準を作成し、これに基づいて実施する。
3)リスクに対する除去・低減対策
作業手順書の中でのリスクに対する対策は、「安全のポイント、カン・コツ等」作業手順書の急所を利用し作成する。
4)作業手順書の改善
現場の作業は、定められた作業手順書に基づいて実施することが基本であるが、定められた作業手順書は「間違いでもないが、絶対正しいもの」とも言い切れず、常によりよい物に改善しようとする取組みが必要である。
また、改善された作業手順書は早急に実施し、良い物は「標準化」して水平展開する。作業手順書の改善は、次の方法で進めると効果的である。
①作業の流れにムリ、ムダ、ムラはないか
②作業の流れに停滞する箇所はないか
③作業に手間がかかり、手直しはないか
④作業の方法に危険性又は有害性等はないか